欧米・中国との比較から見る、国内DXの傾向

これまでの記事で、欧米・中国におけるデジタル化の動向を紹介してきました。では、それぞれの国や地域と日本とを比べた場合にどのような差があるのでしょうか?

日本が置かれた現状を理解するためにも、デジタル技術の普及度や、データ利活用のポイントを中心に、欧米・中国との違いを比較表で見ていきましょう。

目次

ヨーロッパと日本との違い──全域的なインターネット普及率

前提として、欧州連合(EU)の中でも国によってデジタル技術の普及度には差があり、以下に紹介する傾向がEU全域に当てはまらないことを念頭に置いておきましょう。

特に注目したいのが、デジタル技術の普及度。その根幹を担うインターネットの利用率は、2020年時点で日本では8割を超えています。EUと同様に、日本国内でも地域によって普及率に差はあり、都市圏から離れるほど利用率は低い傾向にあるものの、最も低い福島県でも73.3パーセントの人はインターネットを利用していることがわかりました。

また、EUと日本、それぞれが官民の連携強化に取り組んでいますが、インターネットの利用率が高く、情報にアクセスできる人が多いという意味では、日本はデータの利活用を推進しやすい状況にあるといえます。

※1 出典:総務省「令和3年版 情報通信白書 インターネットの利用状況

アメリカと日本との違い──デジタル教育の対象となる世代

地方分権が進んでいるアメリカでは、州によってデジタル化への取り組み方は異なるものの、世界的に見るとDX先進国の一つであるといえます。

注目したいのは、オンライン教育に対する捉え方の違いです。アメリカにおけるオンライン教育は、大人になってから学び直したい人に向けたものという側面が強いといえます。シニア世代も大学に行って学ぶのが珍しくない土壌がある国だからこその捉え方ではないでしょうか。

一方で、日本では、次世代のデジタル社会を担う子どもたちの育成に注力しています。文部科学省は、教育現場におけるICT積極活用の方針を掲げ、デジタル技術の向上を測る教育だけではなく、情報社会におけるモラル指導を始めとしたインターネットリテラシー向上のための教育にも力を入れていくようです。(※2)著名人に対する誹謗中傷や、仲間内のSNSグループにおけるいじめなどが社会問題となっている日本情勢が反映された形といえます。

※2 出典:文部科学省「教育の情報化に関する手引(令和元年12月)概要

中国と日本との違い──政治思想とDXの結びつき

EUや日本でも官民の連携強化に取り組んでいますが、特に中国は「官」の方針ありきという傾向が強く、政府主導で収集したビッグデータを元に公共システムを構築している点が大きな特徴です。

中国ではデジタル人材の活用において政治思想が重要視されている点が、日本との最も大きな違いの一つです。中国において、ビッグデータは公共の資源という意味合いが強いからか、それを扱うデータ人材には政府の方針に沿った考えを持つことが求められるのでしょう。

※3 出典:株式会社クララオンライン「2021年下半期 中国のインターネット利用状況(第49回 中国インターネット発展状況統計)

まとめ

それぞれの国や地域との比較を通じて、日本が見習うべき点や、他者より優れているポイントが見えてきたのではないでしょうか。特に、デジタル教育において、欧米では現役労働者やシニア世代の再教育にも積極的に取り組んでおり、労働人口が年々減少している日本でもデジタル社会を支える人材を増やすという意味で参考にすべきポイントだといえます。

一方で、日本は海外と比べても高いインターネット普及率を誇り、地域格差も小さいことから、DXを推進できる土壌が整っているといえます。デジタル教育の普及やデジタルに対する意識が浸透していくことで、社会全体のDX化が加速するでしょう。

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