技術力だけではない、欧米・中国における「優秀なデジタル人材」の条件とは…

近年、企業の経営戦略においてデータ活用の重要性が増していることから、日本ではデジタル人材を登用する動きが加速しています。過去の記事でも紹介したように、2021年4月には、内閣官房 IT戦略推進室により、デジタル人材の確保・育成に際して参考にすべき人材モデルとその役割が定義されました。

では、日本における「デジタル人材」の基準は、世界的に見るとどうなのでしょうか。欧米・中国における人材活用の動向を見ていきましょう。

目次

ヨーロッパのデジタル人材活用──技術力に加え、リーダーシップを重要視

欧州連合(EU)では、オープンデータを再利用し、官民で連携しながら新たな価値を生み出せる人材が求められています。オープンデータとは、国や地方公共団体が保有しているデータのうち、誰もが無料でアクセス・二次利用できる公共データのことです。例えば、人口統計や医療機関の一覧などがそれに該当します。

2019年6月、EUにより発表された「オープンデータ指令」によると、EUでは官民におけるコラボレーションおよび価値創造が重要視されています。そのため、単にデジタル分野のスキルや知識があるだけでは不十分で、イニシアチブをとってプロジェクトを運営できる人材こそ必要、というのがベースにある考え方です。

後述で紹介する世界的なITスキル基準でも定義されているように、今後のデジタル業界では、実務レベルにおける技術プラスアルファの能力が必須なのかもしれません。

アメリカのデジタル人材活用──データを扱うスキルに重きを置く傾向が

アメリカにおいては、デジタル人材の中でも特に、データアナリストは需要が大きいポジションの一つです。

コロンビア大学傘下の工学応用科学学校(Fu Foundation School of Engineering and Applied Science)が運営するメディアでは、データアナリストに求められるスキルの優先度を以下のように示しています。

  1. データ可視化
  2. データ整形
  3. MATLAB(数値解析ソフトウェア)
  4. R言語(統計解析に特化したプログラミング言語)
  5. Python(汎用的なプログラミング言語)

特徴的なのは、プログラミング言語のスキルより上に、データの可視化や整形のスキルがランクインしていることです。データを整形し、可視化するプロセスにおいて、いずれにせよプログラミング言語のスキルは必要なものの、それだけではデータアナリストとして不十分と見なされることが、このランキングから読みとれます。

なお、データサイエンスに関する資格の有無については、さほど重要視されていないようです。ただし、日本と比べると、アメリカでは修了した学科が就職に影響する傾向が強いため、IT系の学科を修了していると有利に働く可能性はあるでしょう。

中国のデジタル人材活用──スキル以前の政治思想や倫理観が問われる

中国では、世界的に見てもビッグデータの公共利用が進んでいる背景もあり、データエンジニアの需要は大きいといえます。今後、ビッグデータ分野におけるデジタル人材の需要は広がる一方で、その傾向は2025年まで続くというのが有力な見方です。

中国におけるデジタル人材の採用で特徴的な点として、政治的な思想が重要視されていることが挙げられます。中国共産党を支持していることが第一条件のようです。

次いで、法律を遵守することや、人としての信頼性・倫理観が見られる傾向にあります。デジタル分野のスキルが最重要事項として挙がらない点では、他国と同様ともいえるでしょう。

「データ設計者」と「システムエンジニア」が一緒くたにされるケースもありますが、中国では明確に区別されており、前者はビジネスの意思決定に関わる部分まで業務領域に含まれています。その分、報酬も高額に設定されるケースが多いようです。

世界163か国で使用されているITスキル標準「SFIA」

ここまで、それぞれの国や地域の動向について取り上げてきましたが、補足情報として、世界で最も普及が進んでいるとされるITスキル標準「SFIA(Skills Framework for the Information Age)」について触れておきましょう。

SFIAは、2001年、イギリス政府や有識者によって作られました。DXだけに限らず、データサイエンスや、ソフトウェア開発、デジタル製品の販売・マーケティングなど、デジタル技術の活用に関わる幅広い分野において、その標準スキルを定義しています。

特徴的な点としては、デジタル分野における専門スキルに加え、ビジネスに対する責任能力も評価軸として採用されていることが挙げられます。

実際のビジネスシーンを想定して作られた標準のため、その考え方を取り入れることを一度検討してみても良いのではないでしょうか。

最後に

欧米・中国、それぞれの国や地域によってデジタル人材の採用基準は異なりますが、いずれの国においても技術力プラスアルファの能力が求められていることがわかりました。

その背景には、データエンジニアやデータサイエンティスト、データアナリストなど、データ人材に対する需要の広がりがあるといえます。データ活用の文脈においては、システム開発・運用に特化した人材というより、取得したデータをビジネス戦略に生かせる人材が求められているためです。

今後、デジタル人材を採用していくにあたって、一つの参考にしてみてください。

株式会社データ・エージェンシーでは、データ基盤の構築を始めとしたデータ活用の包括的なサポートに加え、デジタル人材の採用も支援しています。まずは、お気軽にお問い合わせください。

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