日本とはどう違う?海外のデジタル教育の実情

高度情報化社会を見越して任意で学校教育に取り込まれていた「情報」科目。2022年から高校での必修科目になりました。さらに2025年度からは大学入学共通テストで「情報」科目が加わります。

このように、日本の教育現場も変化してきていますが、諸外国のデジタル教育はどのようになっているのでしょうか。今日はEU・中国・アメリカの事例を紹介します。

目次

EUの現状ー生涯教育も含めた、職につながるデジタル教育

EUでは、2018年に「Digital Education Action Plan」というデジタル教育のアクションプランが公開されました。これには下記の2点が最優先事項として挙げられています。

  1. 教育および学習のためにデジタル技術をよりよく活用する
  2. DXのための適切なデジタルスキルとコンピテンシーを開発する

さらに、2025年までに全ての欧州人がデジタル教育の恩恵を受けられる環境を実現する「European Education Area」を目標に掲げています。これは加盟国がいかに協力してEU全体を充実させていくかということにも言及されています。

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European Education Area

1999年に設立されたEUには、現在20か国以上が加盟しています。EU加盟国はパスポートなしで各国を自由に行き来できましたが、新型コロナウイルスの流行で情勢が大きく変わりました。EU全体で生活の底上げをし、デジタル社会に対応していく、という切り口で考えられていると言えるでしょう。

また、新型コロナウイルスの流行は、EU諸国の労働者に大きな打撃を与えました。コロナ禍で何百万人もの人が職を失ったり、大幅な収入減に見舞われたりしました。そのため、EUの公式サイトでは雇用・社会問題として「多くの人は新しいスキルを習得し、新たな仕事に移る必要がある情勢」であると述べています。
子どもたちへの教育よりも、現在の生活に直結する大人に対するデジタル教育が喫緊の問題だと捉えられていることが大きな特徴です。

参考:Employment, Social Affairs & Inclusion
   Achieving a European Education Area by 2025 and resetting education and training for the digital age

中国のデジタル教育事情ーコロナ禍で大きく変わった教育現場

大人へのデジタル教育を喫緊の問題と考えるEUとは異なり、中国は子どもに対するデジタル教育に力を入れています。

新型コロナウイルスの流行は、中国の教育現場にも大きな影響をもたらしました。ロックダウンや過密を避けるためにオンライン授業の導入が推奨されましたが、インターネット普及率が高くない中国(2020年3月時点で64.5%)では、都市部と農村部でオンライン授業の環境に格差が生じました。そのためテレビ放送を併用した授業で遠隔教育を可能にし、授業を続けることができたようです。

中国は、その国土の広さと地域による環境の違いで生活レベルが全く異なります。しかしながら、多くの外資系企業がその人口の多さから期待できる巨大マーケットを狙って進出してきます。都市部では富裕層も多く、オンラインツールの使用習慣があり、支払能力も高いため、進出企業の競争は深刻なものとなっています。

第14次5か年計画でも、デジタル化の発展を加速させ、デジタル中国を目指すことが明記されています。コロナ禍で教育現場に係るデジタル化は大きく変わりました。子どもたちへの期待も大きくなっています。

参考:
https://consulting.clara.jp/media/china_internet_statistics45/
※最新2021年下半期の情報は下記リンク
https://consulting.clara.jp/media/china_internet_statistics49/

アメリカのデジタル教育事情ー豊富なオンライン教材での学び

アメリカでは義務教育は州法によって定められ、16歳から18歳までの間で終了します。しかしながら、地域、宗教や人種の違いによる経済格差は非常に大きく、また教育費が非常に高いため、義務教育の途中で退学してしまう生徒も少なくありません。

こういった生徒たちが学習に戻り、よりスキルの必要な職に就くためのクラスが存在していました。しかしコロナ禍の早い段階で学習環境を整えるためにオンラインクラスやeラーニングを併用したところが多くあります。

また、IT化が進んでいる地域では、小学校のうちからChrome Bookなどを使うこともあります。多くの巨大IT企業を有するアメリカでは、企業が学校と提携してオンライン教材やクラスを用いることも多くあります。LEGO Education SPIKEなどのオンライン教材は学校の授業にも導入されている例のひとつです。

その上code.orgという、すべての生徒にコンピュータサイエンスを学ぶ機会を提供することをビジョンに掲げた非営利団体があり、4歳から取り組めるコンピュータサイエンスのカリキュラムを提供しています。

このように企業が教育現場と定型する例が多くあるアメリカでは、デジタル教育も進んでいると思われがちです。しかし全米で見るとコンピュータサイエンスの授業が行われている公立高校は51%と意外に少ないのが現状で、州によっても大きな違いがあると言えるでしょう。

定年がないアメリカでは、シニア世代でも働き続ける人が多くいます。そしてアメリカでもデータアナリストを始め、デジタル人材が不足しています。これまでは「ドロップアウトした義務教育のやり直し」や「高額な大学の授業料を減らすための手段」としてオンラインクラスを履修するというものでした。しかし、コロナ禍においてリスキリングや働き方を考え、デジタル技術を身につける手段としてオンラインクラスを考える人が増えてきました。

ここ数年で増えたオンラインでのデジタル教育は、今後より一層増えていくことでしょう。

参考:Advocate for computer science education
   Computer Science Fundamentals Express Courses

さいごに

それぞれの国の状況は異なりますが、特にコロナ禍での対応は各国に差が見えてきたことが大きいでしょう。海外の事情は、日本でも課題になっている子ども世代のデジタル教育や大人のリスキリングに関してもとても参考になります。今必要なデジタル教育には何か、改めて考えてみましょう。

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